化学物質過敏症を発症したときのこと

2007年6月、化学物質過敏症を発症したときのことは今でも鮮明に覚えています。

その年の5月に勤務地が品川から新木場に変わり、10名くらいで移動したチームのメンバーが色々な身体の不調を訴えていました。目がかゆくてコンタクトが入れられない、鼻水・くしゃみが止まらない、喉が痛いなど。

新木場のオフィスは夢の島のすぐ近くでした。原因はごみ焼却場の影響、埋め立て地ならではの土壌特性、オフィス建材などが考えられました。

私自身は社外で過ごすことも多く始めは何も症状がなかったのですが、環境調査をしていたところ、移動してから1か月ほどで、突然の経験したこともないような激しい頭痛、吐き気、異常な嗅覚の高まりが起こりました。

その日の午前中は社外で打ち合わせをしており、午後新木場の駅からオフィスまで歩いていたのですが、そこから頭痛が始まりました。何とか終業時刻になり帰宅しようと駅に着いたとき、同じチームのスタッフから「顔色が悪いですよ」と言われたことを覚えています。

電車で帰宅している途中異臭を感じ、「これは何かが起きているに違いない」と思い、携帯電話でニュース速報をチェックしながら帰りましが、自宅のある駅に着いたものの、ニュースは何も伝えていません。

「おかしいな」と思いながら歩きだすと、駅からの商店街の通りを一歩一歩歩くたびに、においが違うことを感じました。コンビニの前、薬局の前、電気屋さん前、お総菜屋さんの前、全てににおいの違いを感じるのです。そんなことは今までにないことで、何かおかしいのかなと思いながら帰宅しました。

すると、家の中でも一歩一歩、歩くごとににおいが違いました。その時点でようやく、おかしいのは自分自身なのだとわかりました。

その後は三日三晩、まるで孫悟空が頭を締め付けられるような、これまでの人生で経験したことのないような激しい頭痛、吐き気と通常の10倍くらいの嗅覚が続きました。

調べていく中で恐らく自分の症状は化学物質過敏症であると認識し、その後北里研究所病院で検査をしていただき正式（？）に自分の症状を確認しました。

化学物質過敏症は、発症のきっかけは人それぞれですが、花粉症などと同様、身体の中の化学物質などの不要なものが自分の閾値を超えたときに発症するとされています。要は、バケツがあふれた状態です。バケツの大きさは人それぞれですし、入っているものも人それぞれです。

もちろん治療するための薬があるものではありませんので、症状を改善する方法は①入ったものを出す、②なるべく入れない、の2点です。

発症してから新木場のオフィスには出社できず、1か月ほどお休みした後会社は退職しました。

当時、化学物質過敏症は厚生労働省に疾病として認定されておらず（その後、2009年6月に厚生労働省の病名リストに追加されました）、休職もできない、保険も下りないという状況でした。

インターネットなどで発症された方の体験談などを調べると、どこにも「治る」とは書かれておらず、「症状は軽減します」となっていました。

身体は病気でありながら、社会的には病気としての支援は得られず、セイフティーネットというのは本当に網目のようなもので、多くのものがその穴から落ちてしまうのだと感じたことを覚えています。

ただ、病気として認定されない以上選択肢は「回復すること」だけで、退路を断たれているということはある意味幸福なことだと当時も感じていました。

突然の発症はかなり過激で過酷な変化ではありましたが、心のどこかで「自分にとってよいことが起きている」ということはわかっていました。

将来に不安を感じて何とか会社に残った方が良いのではないかと思うと、数々の信じられないようなことが起き、どうしてもその状況から離れさせようとする宇宙の意思を感じました。

逆に、これも次の人生への後押しだと考えて前向きな選択を考え始めると、多くのサポートが起こりました。毎日毎日次の打ち手を考えていく中で、多くの方に助けていただきました（悪役を演じてくださった方もいらっしゃいましたが（笑）、それらの方々にももちろん感謝です）。

この件は、正に宇宙が介入してきた一件だったと思います。

それ以来、何か大きな力が自分の人生に働いていることを感じ始めたように思います。

回復のために、当時やったことは主に以下のようなことです。

もちろん、最初にやったことは原因のある環境から離れることでした。